決断のためのエビデンス(RCTはほんまに最強なんか?)
Evidence for Health Decision Making - Beyond Randomized, Controlled Trials
ざっと読んだ。一読の価値はあるかと。
N Eng J Med 377;5 465-475.
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMra1614394
とにかくRCTが最強!最強だ!偉いんだ!という考えではなく、RCTにも認識すべき弱点があるので、 観察研究でしかできないこともしっかり考えようね、という。研究デザイン一覧で、case reportまでちゃんと利点と弱点を考えてくれているのが嬉しい。
ざっとRCTの弱みを考えると
- RCTには時間とコストがかかる
- 副作用の検出には向かない
- 一般化可能性が低い
一般化可能性が低いのはよく言われていることで、そんな選ばれたエリート集団の効果を見ても、実際の患者はもっとfrailで併存症バリバリで、そういう集団に本当に効くんかい?という話はしょっちゅう聞く。
一方でエビデンスレベルが高いのも確かで、その点で自分の周りでもRCTがやっぱり強いよね、という話に落ち着くことも多い。Cochraneも基本RCTの統合を念頭に置いている。この論文の中で特筆すべきは「現在のevidence-grading systemは、RCT側へバイアスがかかっている」という文言。これをバイアスというのが切り口として新鮮である。バイアスから逃れるためにRCTをやっているのに、それをバイアスと呼ぶのが、もう、個人的には好き。
因果的な介入効果を見るなら、RCTが一番いいんだろうなあ、とは思う。理想的には。 ただ、副作用を見るにはRCTではフォローしきれんのも事実で、そこは観察研究が必要なのに、もうちょっと観察研究のエビデンスは上げてもよいのでは?ということかな。介入の有効性を評価するためにはRCTの系統的レビューが最上位と なるが、予後や頻度・診断がクリニカルクエスチョンになる場合には、RCTではなく、観察研究が必要だということでしょう。
ちなみに、手術手技のRCTではブラインドがなかなか出来ないけども(例えば噴門側胃切除と胃全摘のRCTなんてどうやってブラインドするんだ?)それでもランダム割付の意味はあるよ、君はRCTの意味をまだ分かってない、的なことを言われたことはある。まあランダム割付は強いんだろうけども、その後にどこまでブラインドされていないことが効いてくるのか、そのあたりの定量化はしたほうが良いだろうな、と思ったり。ランダム化で手術のefficacyが評価できても、長期予後に関しては観察研究をしたほうがいいんだろうかな。コストと言えることのバランスか。
自分的には、
- コストも時間もなるだけかけずに効果が予測できる
ことは大事だと思うので、そこはやっぱり〇〇〇〇〇(自粛)かなあと勝手に思っている。たぶん、RCT側の人からはコテンパンに言われるだろうけど。